口腔機能低下症
年をとると、お口の周りの筋肉が弱くなり、舌や頬を協調させて動かせなくなります。そして、うまく噛めなくなり、うまく呑み込めなくなってきます。
これを回復させることが保険に導入されました。これには気管支に食物が入る障害(軽度な誤嚥)も含まれます。
嚥下は
① 食べ物を口に入れる(先行期)→② 噛む(準備期)→③ 飲み込む 舌ベラの奥を通過(口腔期)→④ 気管のあたりを通過(咽頭期)→⑤ 食道通過(食道期)と分けて考えますが、今回は②噛む→③④飲み込む このあたりの問題点を探ります
②噛む
まず、入れ歯などが入っていて、噛める状態であること・・あたりまえ
唇(唇の筋肉)を閉じて 舌ベラ(舌の筋肉)と頬(頬の筋肉)で食べ物(食塊)を歯列の上にのせて噛む(咬筋など)作業です。これらの筋肉と噛むタイミングが大事です。
③飲み込みから④気管のあたりの通過
喉の前のほうの気管は空気 後ろの方の食道は食べ物の通り道です。いつもは気管があいていますが、食べ物が入ると気管が閉じます。
のどぼとけ(甲状軟骨)が上がって気管に蓋(喉頭蓋)がされ、軟口蓋や舌の後方が閉鎖され 食塊が食道を通過する これらも筋肉やタイミングが大事です
Ⅰ 患者様ができる状態か?望むか?
全身状態や意識状態が悪くないこと、またしっかり座れる程の体力が必要です。
回復には訓練を伴うものもあります。患者様が望まれるか確かめましょう
Ⅱ 対象者はだれ
患者様に以下の症状があるか質問します
咀嚼に必要な 舌・頬・喉の筋肉量の低下、運動の協調性を調べます
以下1つでもあれば口腔機能低下を疑います
口渇
① 口の中が渇くようになった
口唇や噛む筋肉の低下
② 硬いものが食べにくくなった
③ 食事をするのに時間がかかるようになった
④ 食べこぼしをするようになった(口唇の閉鎖不全)
バランスよく動かなくなった
⑤ 滑舌が悪くなった
⑥ 食後に口の中に食べ物が残るようになった
⑦ 薬を飲みこみにくくなった
⑧ 汁物を飲むとき時々むせるようになった(嚥下障害・誤嚥)
★感想
ある程度老化すると健常な方にも、1項ぐらいは当てはまると思うのですが
Ⅲ 診断
口腔機能低下症 | 計測機器 | 代替え |
---|---|---|
①口腔不潔 | 細菌カウンタ | 舌苔付着程度 |
②口腔乾燥 | ムーカスライフ | サクソンテスト |
③咬合力低下 | デンタルプレスケール | 残存歯数 |
④舌口唇運動機能低下 | オーラルディアドコキネシス | ペン打ち法 |
⑤舌圧低下 | 舌圧測定器 | ペコパンダ |
⑥咀嚼機能低下 | グルコセンサー | スコア化資料 |
⑦嚥下機能低下 | EAT10質問紙 |
保険で請求するには
65歳以上の口腔機能低下が疑われる方に、上記の検査の内3つ以上行う(ただし3つの検査の内に赤字の検査が1つは入っていること)
機械を使ったほうが望ましいが、代替え方法でも診断でき請求可
Ⅳ 管理 診断方法
① 口腔不潔
患者様ご自身が口をきれいにしていただくように指導します。
家族の方に指導や清掃をお願いします
訪問診療では衛生士による指導もあります
計測
細菌カウンタ
舌苔付着度 TCI(Toung Coating Index)
スコア0 舌苔は認められない
スコア1 舌乳頭が認識可能な薄い舌苔
スコア2 舌乳頭が認識不可な厚い舌苔
舌表面を9分割してスコア(0・1・2)をつけて18で割る。50%以上で不潔あり
★感想
綿棒のようなもので舌苔を拭い、それをカウントするのですが、拭った箇所や拭い方によって、かなり違いが生じると思います。見た目(舌苔付着度)の方がましか?
② 口腔乾燥
薬剤
口腔乾燥を引き起こす薬剤はかなりの種類があります。処方されている薬剤を変えていただければ良いのですが、困難なケースが多いです
加齢・その他
唾液分泌促進剤は唾液分泌細胞に負担をかけるため、長期の使用は勧められません。
唾液腺のマッサージを腺細胞が増えるわけではないのですが、効果があるとされています
健口体操(むすんでひらいて?)などもマッサージ効果があります
保湿や水分補給
・時々、口をゆすぐ(含嗽指導)
・水をこまめに飲む(水分管理 水分補給の指導)
・保湿する(口腔保湿剤・加湿・ネブライザー・マスク着用等指導)
計測
ムーカスライフ
サクソンテスト
2g/2分間以下
★感想
ムーカスライフは計測箇所やその時の患者様の口腔状態によってかなり違いが生じると思います。サクソンテストの方が正確と思いますが、2分間は患者様の負担がちょっと大きいか?
訓練によって改善をめざすもの
訓練はリップルトレーナーやペコパンダのように、筋力低下に特化したものがありますが、多くは口腔全体の筋力の増強や運動のバランスをよくするものが多いです。
③ 咬合力、⑥咀嚼機能低下
虫歯をなおしたり、入れ歯をなおしたりして噛めるようにして食事をしていただくしかありません
嚥下障害があるときには
咀嚼訓練用食品(プロセスリード「大塚製薬工場」等)を用いた咀嚼訓練をします
重度のものは今回の訓練の対象ではありません
咬合力計測
感圧シート(デンタルプレスケール)
保存不能(残根 動揺度3)の歯を除いて 残存歯が19本以下
★感想
残存歯数で咬合力が測れるとはとても思えません。咬合力を測るのはデンタルプレスケールでしょう。計測器がセットで¥425000と高めが難点か?
咀嚼機能低下計測
グルコセンサー
グルコース濃度100mg/dl 未満
スコア0・1・2
★感想
スコアでも咀嚼程度はわかると思いますが、スコア2以下とは基準が甘すぎと思います。グルコセンサーは¥24800とお手頃
④-1口唇運動機能低下
・「パ」の繰り返し発音訓練の指導
・口唇の自動運動(口角牽引、口唇突出など)の指導
・吹き戻し(ピロピロ笛)を用いた訓練の指導
④-2口唇の筋力の低下
・抵抗訓練器具(リップルトレーナー「松風」等)の訓練指導
・頬のふくらまし訓練
④-3舌の運動機能低下
・「タ」「カ」の繰り返し発音訓練の指導
・舌の自動運動(舌の前方や左右への突出など)の指導
舌を口角の左右につける運動をできるだけ早く繰り返すように指示する
舌の突出と後退をできるだけ早く繰り返すように指示する
(可動域訓練 無意味音節連鎖訓練 構音訓練 早口言葉 その他「嚥下間接訓練」参照)
計測
オーラルディアドコキネシス
5秒間にpa//ta//ka/がそれぞれ何回言えるか計測します。1秒間どれかが5回以下なら機能低下
自動計測機 健口君 5秒間計測
ペン打ち法 5秒タイマーで測り ペンで紙に点を打つ
★感想
自動計測機(健口君)でもペン打ち法でも精度は違いがないと思えます
⑤ 舌の筋力の低下
・抵抗運動器具(ペコパンダ「JMS」等)による訓練指導
舌圧測定器30kPa以下
舌トレーニング用具(ペコパンダ)Hがつぶせない
★感想
舌筋力の測定ですので、舌圧測定器が適当と思えます。測定器も¥150000とお手頃
⑦ 嚥下機能低下
軽度の嚥下障害は嚥下の間接訓練を行うことで改善されます
(嚥下体操 その他「嚥下関節訓練」参照