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有病高齢者歯科治療のガイドライン

目次

西田百代先生監修・椙山加綱先生著(クイントエッセンス出版株式会社)
2002年に発刊されて2013年11月に改訂版がでました。訂正された部分について記載しました

1.高血圧

高血圧の重症度と歯科治療内容
収縮期200mmHg以上 拡張期120mmHgは危険
男40歳以上 女50歳以上で健診を受けていない人は要注意

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日本高血圧学会・高血圧治療ガイドライン2009もありましたが 割愛しました。

高血圧患者への歯科麻酔剤

キシロカイン(2%リドカイン塩酸塩1/8万アドレナリン添加 )
シタネスト-オクタプレッシン(プロピトカイン-フェリプレッシン)
 麻酔効力や止血効果は1/30万アドレナリン添加リドカインに相当する
この2剤を組み合わせて使います

スキャンドネスト(メピバカイン)
 わずかに血管収縮作用がある 30分程できれる  持続時間がシタネストのほうが長いのでキシロカインとの組み合わせではシタネスト-オクタプレッシンに比べて不利

180mmHg以上 赤信号歯科治療中断 160mmHg以下になるのを待つ
160-180mmHg 黄色信号いつでも中断できる体制をとる すぐ抜ける歯なら抜くがこれから抜歯するなら待つ
 1/8万アドレナリン添加2%リドカイン1/2カートリッジ投与
 (必要ならシタネスト-オクタプレッシン3カートリッジ以内)
160mmHg以下 青信号 
 1/8万アドレナリン添加2%リドカイン1カートリッジ投与
 (必要ならシタネスト-オクタプレッシン3カートリッジ以内)
140mmHg以下
 1/8万アドレナリン添加2%リドカイン2カートリッジ投与

血圧が著しく上昇した際はニフェジピン(アダラート)5-10mgを経口投与 。作用発現まで20-30分かかります。アダラートの舌下投与は禁忌になりました。
ニトロペン舌下錠の投与の記載がなくなりました。たしかに作用は弱いのですが(10-20mmHg程度?)数分で効き4時間程度持続するので便利と思うのですが?

自動血圧計を使用して血圧、脈拍数、SpO2をモニタします。歯科治療中は5-10分ごとに血圧を計測します。

2.狭心症

狭心症と歯科麻酔
CCS(カナダ心臓血管協会)の機能分類を参考にします ClassⅠからⅣまであります
ClassⅠ 普段は大丈夫ですが過激な運動で狭心痛があります
 1/8万アドレナリン添加2%リドカイン2カートリッジ投与可能

ClassⅡ 階段や坂道を登る程度で狭心痛がある
 1/8万アドレナリン添加2%リドカイン1カートリッジ投与
 (必要ならシタネスト-オクタプレッシン3カートリッジ以内)
ClassⅢ 平地を歩くだけで狭心痛があります
 1/8万アドレナリン添加2%リドカイン1/2カートリッジ投与
 (必要ならシタネスト-オクタプレッシン3カートリッジ以内)
ClassⅣ 少し動くだけで狭心痛がある
 以下治療不可

狭心症と血圧・脈拍
自動血圧計を使ってRPP(収縮期血圧x心拍数)を計測して、それが14000以下であること 16000なら中止です(12000以下が理想ですが、これですと警戒音なりっぱなしです)
自動血圧計がない場合「心拍数が100回のとき収縮期血圧が140mmHg以上なら休憩 収縮期血圧が160mmHGに上昇したとき心拍数が90回以上なら休憩」です

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血液抗凝固剤について
脳や心臓などの血管障害が有るかたは、抗血栓剤がでています。「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2010年版」で推奨しているのは
① 至適治療域にPT-INRをコントロールした上でのワルファリン内服継続下での抜歯 
② 抗血小板薬内服継続下での抜歯 

①至適治療域にPT-INRをコントロールした上でのワルファリン内服継続下での抜歯 について
ワーファリンが投与されている場合はPT-INRを参考にします。3.0以下ですと休薬しないで処置をするのですが、2.0を超えると相当止まりづらくなります。ワーファリンはビタミンKの吸収を阻害することで血を固まりにくくするのですが、ビタミンKは納豆や緑黄色野菜に多く含まれており、食べるものによって抗凝固作用が安定しません。PT-INRの目標を1.6-2.6にしたり2.0-3.0にしたり医師によって違います。患者様に外科処置を行う際、当日の値も違ってきます。なるべく近日中の値を得るか、簡易測定器(下記)で計測するのが良いでしょう。

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下図の注意の部分はスポンゼルの使用、縫合、シーネが必要を思われる部分です。3.0以下ですと、かなりの処置が可能にはなるのですが、実際は大変です。止血方法は徹底的に掻爬した後、スポンゼルを入れて縫合するのですが、それでもなかなか出血が止まらなかったケースがあります。ワーファリンはビタミンKを入れれば3-6時間ほどで回復します、これは最後の手段ですね。

タビガトラン(プラザキサ)リバロキサバン(イグザレルト)はワーファリンと違って非常に安定した薬効があります。これから使用頻度が高くなると思います。比較的新しい薬ですので歯科処置に関する指針がでていません。抗トロンビン薬ですので PT-INRを参考にすれば良いと思いますが、指標にならないと記載があります、APTT(活性化トロンボプラスチン時間)にも良く反映されるようです。内科医と相談しながら治療を進めるしかないと思います。早く指針が出て欲しいと思っています。T.max2時間で半減期で12時間と非常に短いので、最後の手段として休薬して時間待ちすれば止血できると思います。

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②抗血小板薬内服継続下での抜歯 について
アスピリンは安定した状態では50-162mg投与されます。100mg/日が多いようです。内服継続下での歯科治療となりますが、多剤投与などでは要注意です

参考までに 消化器内視鏡診療ガイドライン2012年 ポリープ切除術など  
① 血栓塞栓症の発症リスクが高いアスピリン単独服用者では、休薬無く施行してもよく、血栓塞栓症の発生リスクが低い場合には、処方医に休薬の可否を確認の上、3-5日の休薬を考慮する

② アスピリン以外の抗血小板単独内服には、休薬を原則とし、休薬期間はチエノピリジン誘導体(パナルジンⓡ、プラビックスⓡ)が5~7日間、チエノピリジン誘導体以外の抗血小板薬は1日間の休薬とし、血栓塞栓症の発症リスクが髙井症例では、アスピリンまたはシロスタゾール(プレタールⓡ)への置換を考慮する

③ 抗血小板薬を2剤内服している患者は血栓塞栓症の発症リスクが高く、抗血栓薬の休薬は極力避ける必要がある。抗血栓薬の休薬が可能となるまで延期するか、アスピリンまたはシロスタゾール(プレタールⓡ)継続のもとで治療する

鎮痛薬
ワルファリンとNSAIDsについて「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2010年版」には「抜歯後のNSAIDsやCOX-2阻害薬の投与は原則的に行うべきでないが、行うに際しては慎重に行うことが必要である」とありますが、アセトアミノフェンとCOX-2阻害薬は比較的安全に使用できるとの報告もあります

抗菌薬
ワルファリンの作用を増強させます。抗菌薬は腸内細菌を殺すからです。フロモックス(セフカペン)とメイアクトMS(セフジトレン)は添付文書に相互作用の記載がなく比較的安全に使用できます

伝達麻酔
ワルファリン服用者の下顎孔の伝達麻酔は「禁忌」から「原則行わない」に表記が変わりました。近位伝達麻酔はより安全と思いますがどうでしょうか。

近位伝達麻酔法
咬筋と内側翼突筋の間に局所麻酔薬1.8mlから2.7mlを入れる方法です。ここには太い神経や血管がないので安全です。31G・12mmの針を使用します。非常に簡便で特別な技術を必要としません。

3.心筋梗塞

「6ヶ月以内の歯科治療禁止」から「発症後30日経過すれば注意深い全身管理のもとで歯科治療は可能」に変わりました。一般の歯科医院3ヶ月以降に延期したほうが良いでしょう。
麻酔の使用量や血圧などの測定は狭心症と同じです

4.心不全

NYHA(ニューヨーク心臓協会)の分類が記載されていましたが、CCS(カナダ心臓血管協会)の分類と違いが見つかりません。
この分類でⅡ度なら30分程度の歯科治療が可能です。

METs(metabolic equivalents)と身体活動の分類 というのもありました
NYHA分類と同じようなものですが、1.0から8.0まで段階があり 

4METs(日常生活 下記)程度でひどく疲れる、胸がドキドキする。胸が苦しいなどの症状があればNYHA分類のⅡ度になります。
速歩(平地を5.7-6.0km/時で歩く)・階段を楽に2階まで上る・自転車・サイクリング(16km未満)・子供と遊ぶ・通勤・車椅子を押す・庭掃除・屋根の雪下ろし

5.不整脈

心電図のモニターを原則的に行い 経過観察程度なら「注意深い全身管理のもとに歯科治療を行うことができる」とあります

経過観察
1. 散発性の上室性期外収縮(毎分6回未満)
2. 散発性の上室性期外収縮(毎分6回未満)
3. 慢性の心房細動(心拍数60-100回/分)
4. 第一度の房室ブロック
5. 脚ブロック

ペースメーカー装着者
使用できるのは 根幹長測定器と歯髄診断機 
使用しないほうが良いのは イオン導入器 超音波スケーラー 電気メス

超音波スケーラーは磁走型(マグネット型)は使用してはいけない 電歪型(ピエゾ型)は使用しないほうが良い

6.心臓弁膜症

感染性心内膜炎を予防するための抗菌剤の予防投与
ClassⅠ(予防投与をすべき患者)
   人工弁置換手術後(生体弁 同種弁を含む)・感染性心内膜炎の既往
ClassⅡ(予防投与をしたほうが良い患者)
ほとんどの先天性心疾患・後天性弁膜症・閉塞性肥大型心筋症・弁逆流を伴僧帽弁逸脱
ClassⅢ(予防投与を否定できない患者)
   人工ペースメーカーあるいはICD(植え込み型除細動器)がある患者
   長期にわたる中心静脈カテーテル留置の患者

抗菌薬の前投与(AHAのガイドライン)
 アモキシシリン2.0g(250mgを8カプセル)を1時間前
 ジスロマック500mg(250mgを2錠)を1時間前
わが国では30mg/kg つまり50kgの体重の人は1.5gといわれています
日本化学療法学会ではリスクの少ない患者には500mgでよいとしています

7.脳卒中(脳血管障害)

血管が切れるのと詰まるのがあります。詰まるほうは、脳卒中の再発と抗凝固薬に注意しなければなりませんが、注意事項は狭心症・心筋梗塞と同じです
1ヶ月以内はどのような歯科治療でもリスクが高く、口腔外科手術は3ヶ月以上延期したほうが良いとあります

8.糖尿病

術後の感染・治癒が遅い 感染により糖尿病が悪化すること 抗菌剤の投与で対処します
HbA1c>8.4 空腹時>160mg/dL 食後2時間>220mg/dLはリスクが高い
糖尿病で怖いのは 低血糖と高血糖で起こる昏睡です
歯科で使用する程度のアドレナリンでは高血糖をおこすことは無い
低血糖
低血糖は30mg/dLでは死にいたることもあるので要注意です。
糖尿病薬としてαグルコシターゼ阻害剤(グルコバイ)とインシュリンなどと併用している患者はショ糖を飲んでもすぐにブドウ糖に分解しないので、必ずブドウ糖を飲ませる

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200mlを飲み 10-15分後回復しないようなら残りを飲む

高血糖
高血糖による昏睡は起こることは稀です。治療はインシュリン投与や輸液ですので、まよわず救急車です。

9.ステロイド療法

過去1年以内に3週間以上にわたり(以前は1ヶ月以上の記載)継続的にプレゾニドロン5mg/日以上のステロイド薬を投与されいる患者は、2次的な副腎皮質機能低下が起こっていると考え対応したほうが良い。
ステロイド薬中止後6ヶ月で徐々に回復し始め。1年たつと副腎皮質機能は完全に回復する。
1本程度の抜歯ではステロイドカバー必要なし。

ステロイド中止後の回復時期によるステロイドカバーの量は不明。
従来の一律大量投与(ヒドロコルチゾン100-200mg投与)から侵襲の程度によって段階的に投与量を変える段階的低容量法に変わってきています。ヒドロコルチゾン25mg(またはメチルプレドニゾロン5mg)処置前に静注するか、sるいは1日の倍量の糖質コルチコイドを経口投与
ステロイドカバーをするときは必ず主治医と相談します

10.腎不全

慢性腎疾患(CKD) 
腎疾患は初期のころは自覚症状がありません、なるべく早い時期にCKDを発見して進行を阻止する
透析はほとんどのかた96.2%が血液透析ですが、腎機能をなるべく利用するため初期には腹膜透析を行います。

鎮痛薬
CKDの患者にはなるべくNSIADsを投与しない。
アセトアミノフェン 1回400mg 投与間隔は6-8時間 最大4g/日 短期で投与
抗菌薬
アジスロマイシン CKDでも透析患者でも同じ

CKD患者に歯科診療中に急激に血圧低下(収縮期血圧<80mmHg)がおこることがある?

11.慢性閉塞性肺疾患

特に記載の変化なし
PaO2の計測 CO2ナルコーシスに注意して酸素吸入

12.喘息

「アドレナリン含有の局所麻酔剤の使用は控える」から「極力少なくする」に変更 高血圧の項参考
鎮痛剤
アセトアミノフェン 300mg/1回 で投与します 高容量は注意
塩基性鎮痛剤とCOX-2阻害剤・セレコシブ(セレコックス)(抜歯後の消炎・鎮痛に適応あり)を推奨
エモルファゾン(ペントイル セラピエース)だけがアスピリン喘息禁忌ではない(添付文書に記載がない)。塩基性鎮痛薬で効きが悪いだけでなく 置いてある薬局がありませんでした。購入しようと思いましたが1000錠単位(¥9800)でしか販売していない

13.BRONJU

BP(ビスフォスフォネート)製剤 
骨転移を起こす悪性腫瘍には注射用 骨粗鬆症やステロイド療法を受けている人には経口用が用いられています 経口用のBRONJ発生率は0.01-0.02% 1000人に1人か2人ですが、発生すると抗菌剤が効きづらいので相当大変です。休薬した場合 挫滅骨折などの危険性があります
抜歯時の注意
① 服用期間が3年未満で危険因子がない場合は休薬しない
② 服用期間が3年未満で危険因子がある場合は抜歯前3ヶ月から抜歯後3週間休薬する (危険因子は高齢・ステロイ治療・糖尿病・喫煙・飲酒・口腔衛生不良)
③ 服用期間が3年以上なら、抜歯前3ヶ月から抜歯後3週間 休薬

デノスマブもBP製剤と同様に危険ですが、記載はありません

インプラント植立によるBRONJUの発生記事があったと思いますが見つかりませんでした

14.パーキンソン病

以下の表示がなくなった
パーキンソン薬服用の患者様の20-30%に起立性低血圧あり
L-ドーパ剤服用中の患者様へのアドレナリン禁忌

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